【レビュー】「Steam Deck LCDモデル」は、PCゲームをより身近に・手軽にしてくれる「相棒」だった

今回は初代「Steam Deck」(LCDモデル)の512GBモデルを購入したのでレビューする。


「Steam Deck」は「Steam」との高い親和性、AAAタイトルもプレイできる高性能が魅力の製品。中身はPCそのもので、小ぶりなボディにPS4並みの性能を有している。近年、同型のハンドヘルドPCの選択肢も増えてきた。「Steam Deck」はその初期から変わらず販売され続けているが、いまだその魅力は衰えることを知らない。


筆者は無数ある積みゲーを消化するべく購入したが、その実力はいかほどか。実際に2ヶ月間使用して感じたメリット・デメリットについて紹介する。

スペック

基本スペックは以下の通り。

  • CPU「Zen2(4コア/8スレッド)ベースのカスタムAPU」
  • GPU「RDNA2アーキテクチャを採用した1.6TFlopsのGPU」
  • メモリ「LPDDR5規格を採用した容量16GBのメモリ」

総括すると、現代のゲーミングPC基準では必要最低限の処理性能と言えるスペック。ハンドヘルドPCの中でもローエンド〜ミドルエンドのスペックで、とても高性能とは言えないが、スペック差をひっくり返すほどの魅力が詰まっている。

使って感じた「Steam Deck」のメリット・デメリット

  • サイズは大きめだが持ちやすい
  • 無理のない性能で扱いやすい
  • (癖はあるものの)よく練られたボタン配置
  • 「めんどくさい」を減らす工夫が満載
  • ハンドヘルドPCのデファクトスタンダードになっている
  • 価格が安い・入手性が高い

サイズは大きめだが持ちやすい

「Steam Deck」は携帯ゲーム機としてはかなり大型で、重量も「669g」と重く、手に取るとかなりずっしり感がある。

本体が重く大きい分グリップ部分もしっかり作られており、重量の割に持ちやすい。重量バランスも良く、片荷重になっていないのも持ちやすさの理由の一つだろう。動きの激しいアクションゲームでも、手持ちの状態で安定してプレイできる。

無理のない性能で扱いやすい

「Steam Deck」は性能面で特筆すべき点こそないものの、性能・価格のバランスがよく、プロダクトとしての完成度が高い。

性能については冒頭でも軽く触れた通り、PS4と同程度と言われている。かなり重めのタイトルである「cyber punk 2077」の場合、グラフィック設定「SteamDeck(低〜中設定)」で、フレームレートが30〜40前後で動作した。動作重めなAAAゲームでも、設定を工夫する事で十分なフレームレートで快適にプレイできる。

ディスプレイには7インチ・解像度「1280x800px(アスペクト比 16:10)」のIPS液晶が採用されており、解像度が低い分フレームレートを稼ぎやすい。また、ディスプレイが小さいため、グラフィックの荒さも感じにくい。
スペック面で突出した部分こそほぼないものの、プロダクトとしてのバランス・完成度が高い印象だ。

(癖はあるものの)よく練られたボタン配置

操作性については賛否両論あるが、よく練られている。

PCゲームの操作体系はコントローラーやキーボードなど幅広く、ゲームごとに最適な操作方法が異なるが、「Steam Deck」はこれらの操作性の差異を考慮した作りで、向き不向きはあるものの、ほとんどのゲームで不都合なく快適に操作できるよう、ボタンの有無や操作系の配置が工夫されている。

特徴的な操作性の中でも特に賛否が分かれるのはスティックの位置だろう。
左右のスティック位置だが、本体の上側のボタン内側に配置されている。PCゲーマーに多い箱コンユーザーは間違いなく違和感を感じるはずだ。筆者はプロコンユーザーだが、同様に違和感を感じた(とはいえ1,2週間使っているうちに慣れた)。
ただし、手の小さい人はさらに使いにくい可能性がある。本体の大きさに加え、スティック自体の背も高いので、かなり操作しにくいかもしれない。

スティックのすぐ下にあるトラックパッドもかなり個性的だが、有用なシーンは意外と多い。
デスクトップモードやマウス操作を多用するゲーム(コントローラーに最適化されていない古いゲームなど)に利用できる。また、任意の操作を振り分けることができるので、アイテムのショートカットを配置したりと、地味に便利なシーンが多い。
一見すると不意に触れてしまいそうな位置だが、普段使いで誤操作してしまうこともなく一安心。購入前に懸念していたポイントだったので、かなり嬉しい誤算だった。

「めんどくさい」を減らす工夫が満載

PCゲーマーなら「PCを立ち上げるのが面倒」「PCトラブルでなかなか遊べない」「PCでカジュアルにゲームが遊べない」といった経験をされた方も多いはず。筆者はPCを起動するとつい気負ってしまい、カジュアルなゲームがなかなか楽しめないと感じることが多かった。そんな物理的にもメンタル的にも高い障壁を「Steam Deck」は引き下げてくれる。

本体の起動が速くゲームプレイまでが爆速

「Steam Deck」でPCゲーが快適に遊べる理由の一つに、「本体の起動が爆速」である点が挙げられる。「Steam Deck」には専用OSである「Steam OS」が搭載されているため、Windowsより圧倒的に起動が速い。初回起動時にはいきなりSteamが立ち上がるため、ゲーム開始までの待ち時間も非常に短い。

PCゲームなのにスリープ状態に入れる

「Steam Deck」の大きな特徴の一つに、ゲームプレイ中にいつでもスリープに移行できる点が挙げられる。スイッチなどコンシューマ機では当たり前の機能だが、PCゲームが中断できるというのは画期的。

直前までのプレイ状況は保持され、スリープ中も省電力。電源ボタンを押せばいつでもどこでもゲームを再開できる点は大きなメリットだ。

セーブデータも自動で管理、ゲーム用のサブ機にもオススメ

Steamクラウドと自動連携されるため、セーブデータ管理の煩わしさがないのもメリット。「Steam Deck」を外に持ち出しゲームを進めた場合、自宅のWiFiからSteamクラウド上に最新のセーブデータが自動同期される。

ゲーム用の端末が複数台あるでも、Steamクラウド上には最新のセーブデータが常に存在する状態になるため、ゲーミングPCと「Steam Deck」の2台体制でも安心してプレイ可能だ。


「Steam Deck」を導入することで、グラフィック性能以外の多くの部分のゲーム体験を大幅に向上した。ゲームプレイの煩わしさも減り、積みゲーの消化が捗って仕方がない。

ハンドヘルドPCのデファクトスタンダードになっている

国内外さまざまなメーカーから「Steam Deck」に似たハンドヘルド型の小型PCがリリースされている。

中には「Steam Deck」より高性能のモデルも存在するため「Steam Deck」を選ぶメリットは無いように感じられるが、実はそうではない。というのも、「Steam Deck」は事実上ハンドヘルドPCのデファクトスタンダードであるため、サポート面の手厚さや購入後の安心感が段違いに大きいからだ。

市場において「Steam Deck」のシェアは圧倒的に高い。「Steam Deck」で動作する=売れるため、開発者自ら対応を宣伝するケースも多い。

対応の内容は様々で、発売前に実機で動作確認済みというだけでなく、場合によっては「SteamDeck向けグラフィック設定の追加」や「SteamDeck向けに最適化されているケースも挙げられる。それほど「Steam Deck」の市場が無視できない規模になっているということだろう。

また、販売されているゲームが「Steam Deck」で動作するかどうかSteam上で事前に確認することができるので、スペックに詳しくなくても安心して購入できるのは嬉しい。
マニア向けの製品にとどまらず、コンシューマ機として本気で普及させようとしているのがわかる。

価格が安い・入手性が高い

「Steam Deck」は初めての1台として手に取りやすい安価な価格設定も魅力の一つ。

「Steam Deck」にはストレージ容量が64GB、256GB、512GBの3モデルが用意されている。最安モデルがストレージ容量64GBで「¥59,800」となっており、他社のハンドヘルドPCとは比較にならない安さだ。

ストレージ容量以外の差異としては、Steamのプロフィールに使える称号や背景画像の有無と、512GBモデルのみアンチグレアディスプレイ有無のみ。スペックの差異は少ないので、必要なストレージ容量と予算から選ぶことができる。

筆者は512GBモデルを使用しているが、アンチグレアディスプレイに価格差を覆すほどの魅力は感じられなかった(ディスプレイ保護を貼ったらどうせ分からない)。

64GBモデルはAAAタイトルをインストールできないほど容量が少ないが、microSDで簡単にストレージが拡張できる上、本体に内蔵されたSSDの交換も簡単なので、交換や増設を検討している場合、最安モデルを購入するのが最もコスパが良い。

2023年現在、容量1TBのSSDは約「¥10,000〜15,000」程度で購入できるため、512GBモデルを選ぶより2万円ほど安い価格で、2倍の容量を確保することができる。

「コスパ最優先・SSDは自分で交換する」なら64GBモデル、「アンチグレアディスプレイが欲しい・SSD交換はしない」なら512GBモデル、「SSDを交換するか不明」なら256GBモデルがオススメ。

僕は512GBモデルを使用していたが容量が不足したので、結局下記のSSDに交換した。ゲームがインストールされた状態で換装したため、再インストールが面倒だったので、交換を考えている方は、本体と同時に購入するのがオススメ。

使用したのは下記のSSD。性能も十分で、価格も比較的安かった。AliExpressならより安いが、発送が遅いのでこれにした。

「SteamDeck」のここが残念

これまで「Steam Deck」の良い点について述べてきたが、ここからは残念なポイントや少し気になる点について述べる。

  • バッテリーが3〜4時間しか保たない
  • ファンの音が大きく耳障り
  • ポータビリティが低い
  • ゲームによっては性能不足を感じる

バッテリーが3〜4時間しか保たない

「Steam Deck」最大の欠点はバッテリー持ちの悪さ。

ゲームをプレイしているとビックリするほどバッテリーが減っていく。本体の小ささを考慮すると当然と言えば当然だが、充電できない環境で長時間のプレイが想定されている場合、モバイルバッテリーや充電器は必須になる。通勤や通学で毎日使いたいと考えている方はカバンに入れっぱなしができないので面倒かもしれない。

ファンの音が大きく耳障り

「Steam Deck」の放熱ファンは本体上部に位置しており、ゲーム中は高速で回転する。

プレイ中はかなり高速で回転するため、高負荷のゲームをプレイするとかなりノイズが発生する。ゲーム音が聞こえないと言うほどではないが、静かな環境だとノイズでゲーム音が聞き取りにくく感じることがある。電車など騒音の多いところでプレイする分には問題ないが、静かなところではスピーカーの音量上げるか、イヤホンを使用するのがオススメ。

ポータビリティが低い

「Steam Deck」は一応携帯ゲーム機だが、「ニンテンドースイッチ」と同じように考えてはいけない。

外でPCゲームをプレイできるのは新鮮で、つい持ち歩きたくなるものの、重さはスイッチの2倍、グリップ部分の厚みも2倍以上、幅も60%レイアウトのキーボードほどあり、とても小型とはいえない。ケースなどに入れると、ビジネスバッグやトートバッグには入らない。

プレイ中は手に馴染むため大きさも気にならないが、携行する場合は大きめのバッグが必要になる。

ゲームによっては性能不足を感じる

小型のボディに機能をギュッと詰め込むというなかなか無茶な設計ということもあり、性能はゲーミングPCとしてギリギリの低水準。高クオリティでゲームを快適に楽しみたいというユーザーには物足りない性能である点は気に留めておきたい。

グラフィック設定を下げたり、設定を突き詰めて最適化することが必要になるため、創意工夫を楽しめる物好きにはオススメだが、PCゲーム初心者には少しハードルが高いと言えるかもしれない。

正直、512GBモデル程度の価格だと、かなり快適なゲームPCを組むことができるので、初心者はまず母艦となるPCを自作することから始めた方が、後々幸せになれるだろう。

まとめ:PCゲーをよりカジュアルに・手軽に楽しみたい方の2台目にオススメ

ここまで「Steam Deck」の良い点、気になる点について赤裸々に述べたが、正直言ってかなり気に入っており、最近ではPCよりSteam Deckでゲームをプレイする時間の方が長いほど。「PCゲームは真剣に取り組むもの」という先入観から解放され、好きな時間に好きな場所でプレイできるので、PCゲームをより手軽にしてくれる。

  • 積みゲーをより快適に・手軽に消化したい
  • カジュアルなゲームのプレイが中心
  • 面倒な設定不要で、なるべく気軽に使いたい

筆者と同じ考えの人は、「SteamDeck」の導入を前向きに検討しても良いかもしれない。

発売から2年も経っており、今更購入するのはどうなの?と思う方もいるだろうが、近々OLEDディスプレイを搭載したスペックアップモデルが発売されるので、そちらを購入すれば今後2年は安泰だろう(次期モデルは今後2年以内に発売される予定はないと明言されているため)。

他社製品でよりハイスペックなモデルも続々登場しているが、Steamとの親和性と手軽さにおいて、「Steam Deck」の優位性はまだまだゆるがないだろう。