結論から言えば、DELL XPS 13は、非常に完成度の高いモバイルPCだ。
今回、DELLアンバサダープログラムの「Dell 高性能 AI PC体験モニター」に当選し、この美しいマシンを約1ヶ月間、メインPCとして使用する機会を得た。
普段はパワフルな自作デスクトップPCを母艦とし、サブに型落ちのLet’s Noteという、実用性を重視した環境で作業をしている筆者。そんな僕のデスクに現れたXPS 13は、非常にエレガントで、魅力的な一台だった。
Web開発、ブログ執筆、RAW現像、そしてローカルAIの実行まで、このPCが持つポテンシャルを確かめるべく、僕の日常のあらゆる作業をこの一台で試してみた。

これは、そんな約1ヶ月間の試行錯誤の記録であり、その魅力を余すところなくお伝えするレビューである。
XPS 13 (9350) の良いところ、気になるところ
まずは、このPCを使い込んで見えてきた良い点と、少し気になった点をまとめておこう。
良かった点
- CNC削り出しアルミが生む、工芸品のような美しいデザイン
- ドットを認識できないほど高精細な有機ELディスプレイ
- 見た目に反して意外と打ちやすいゼロラティスキーボード
- モバイルPCの常識を超える、Core Ultra 7のパワフルな性能
- NPU搭載でローカルAIも実用的にこなせる先進性
気になる点
- USB-Cポートが2つだけという、拡張性の低さ
- 人によっては慣れが必要なシームレスなトラックパッド
見ての通り、大きな懸念点は「拡張性」に集約される。 これさえ許容できるなら、XPS 13はあなたの最高のパートナーになるだろう。
良い点についてはこの後じっくり語るとして、まずは多くの方が気になるであろうデメリットから掘り下げていこう。
レビュー機の主なスペック
今回お借りしたモデルの主なスペックは以下の通り。Core Ultra 7に有機ELディスプレイを搭載した、現行ラインナップの中でも上位の構成だ。
カテゴリ | スペック詳細 |
---|---|
プロセッサー | Intel® Core™ Ultra 7 258V |
OS | Windows 11 Pro |
グラフィックス | Intel® Arc™ グラフィックス |
メモリ | 32GB (LPDDR5X, 8533MT/s) |
ストレージ | 1TB (M.2, PCIe NVMe SSD) |
ディスプレイ | 13.4インチ 3K OLED (2880 x 1800), タッチ対応, 60Hz, 400nit |
ポート | Thunderbolt™ 4 (USB Type-C™) × 2 |
ワイヤレス | Intel® Killer™ Wi-Fi 7 + Bluetooth 5.4 |
カメラ | 1080p フルHD RGBカメラ |
サイズ | 14.80 mm x 295.30 mm x 199.10 mm |
最小重量 | 1.18 kg |
唯一にして最大の弱点。割り切りが必要な拡張性
XPS 13の最大にして唯一とも言える弱点が、拡張性の低さだ。搭載されているポートは、Thunderbolt 4 (USB Type-C)が左右に1つずつ、合計2つのみ。


このミニマルなデザインを実現するためとはいえ、実用面では不便を感じる場面が多くあった。
例えば、外出先のカフェで作業中、バッテリーが減ってきたので充電したい。同時に、マウスやキーボードを接続するためのUSBハブも使いたい。これだけで2つのポートが埋まってしまう。この状態で、SDカードリーダーを使ってカメラから写真を取り込むことはできない。
自宅やオフィスで使うならドッキングステーションを常設すれば解決するが、このPCの魅力である「身軽さ」を活かして様々な場所に持ち運んで使うことを考えると、常にポートの数を意識する必要がある。
せっかくの美しいデザインも、ハブやドングルを接続すると少し損なわれてしまうのが悩ましいところ。この割り切りができるかどうかが、XPS 13を快適に使えるかどうかの大きな分かれ道になるだろう。
工芸品のようなミニマルデザイン。所有する満足感
もはやPCというより、一つのアート作品のようだ。
CNC削り出しのアルミニウムから作られたユニボディは、どこにも継ぎ目がなく、手に取るとひんやりとした金属の質感が伝わってくる。MacBookが切り開いた「上質なPC」という価値観を、DELL流に解釈し、昇華させたのがこのXPS 13だ。

パームレストと一体化したガラスのトラックパッド、キーの隙間をなくしたゼロラティスキーボード。徹底的に要素を削ぎ落としたミニマルなデザインは、とても美しい。カフェで広げれば、洗練された雰囲気を演出してくれるだろう。

このPCがそこにあるだけで、デスク周りの空気が引き締まる。「いいモノを所有している」という満足感。 これこそが、XPSシリーズが長年トップブランドであり続ける理由なのだ。
息をのむほど美しい有機ELディスプレイ
XPS 13の電源を入れて、最初に感動したのはディスプレイの美しさだ。
13.4インチの画面に詰め込まれた2880×1800という圧倒的な解像度。 有機ELが描き出す漆黒と鮮やかな色彩は、「綺麗」という一言では表現しきれないほどだ。

sRGB、DCI-P3カバー率ともに100%というプログレードの色再現性は、僕が撮影したRAWデータを非常に忠実に表示してくれた。フォトグラファーや映像クリエイターが、このディスプレイを理由にXPS 13を選ぶ価値は十分にある。
アスペクト比が一般的な「16:9」より縦に広い「16:10」なのも見逃せない。このわずかな差が、Webブラウジングやコーディングの効率を大きく向上させてくれる。一度体験したら、手放せなくなる快適さだ。
未来の操作感。キーボードとトラックパッドは「慣れ」で快適に
見た目のインパクトが最も大きいのが、このキーボードとトラックパッドだろう。

キーの間に隙間がない「ゼロラティスキーボード」。正直、最初は「打ち間違えが多いのでは」と思っていた。しかし、それは杞憂に終わった。一つ一つのキーが大きく、見た目以上にストロークが深いため、数時間もタイピングすれば指が完全に対応してしまったのだ。今では、数年連れ添ったMacBookより打ちやすいとさえ感じる。
どこまでが操作エリアか分からないトラックパッドも同様だ。長年のPC経験が指に場所を記憶させているのか、意識せずともごく自然にカーソルを操作できていた。
左クリックと右クリックの境目がない点についてはいまだに戸惑うが、それ以外はいつも通り使用できる。
これは、ユーザーの順応性を信じた、DELLの挑戦的なデザインだ。 万人受けはしないかもしれない。しかし、この未来的な操作感に慣れたとき、XPS 13はより使いやすいツールとなるだろう。
モバイルPCとは思えない、パワフルな性能。ローカルAIもこなすNPUの力
基本スペックは申し分ない。Intelの最新CPU「Core Ultra 7」を搭載し、メモリも潤沢。ゲーミングのような極端な高負荷作業を除けば、不満を感じる場面は皆無だ。

LightroomでのRAW現像、Dockerでの開発環境構築、複数のアプリを同時に立ち上げてのブログ執筆。デスクトップPCで行うのと同じ感覚で作業をしても、ファンは静かなまま、本体がほんのり温かくなるだけ。その快適さに、自分がモバイルPCを使っていることを忘れるほどだった。
そして、このマシンの先進性を象徴するのが「NPU」の存在だ。 試しにローカル環境でLLMを動かす「Ollama」を導入し、この記事の校閲を依頼してみた。クラウドAIと比べれば時間はかかるが、ネット接続なしで、プライバシーを気にせずAIを使えるという体験は想像以上に快適だ。

外出先のカフェで、自分だけのAIアシスタントと対話しながら作業を進める。そんな新しいワークスタイルが、このXPS 13なら実現できてしまう。
まとめ:クリエイターにこそ勧めたい、魅力的な一台
約1ヶ月、僕のメインPCとして活躍してくれたXPS 13 (9350)。 その結論は、やはり冒頭で述べた通りだ。
拡張性の低さという一点を除けば、性能、デザイン、ディスプレイ品質のすべてにおいて最高レベルに達した、プロフェッショナル向けのプレミアムモバイルPC
USB-Cポートが2つしかない点は、多くの周辺機器を繋ぎたいユーザーにとっては明確な欠点だ。ドッキングステーションやハブの利用は必須となるだろう。
しかし、その一点さえ許容できるのなら、これ以上ない最高の1台といえる。

最高のディスプレイと妥協のないパフォーマンスを、工芸品のように美しい筐体で持ち運びたい。 そんな願いを持つ、クリエイターや開発者、そして「いいモノ」を愛する人に、DELL XPS 13は最高の選択肢の一つとなるだろう。
これは単なるPCではない。あなたの創造性を刺激し、所有欲を満たし、日々のワークスタイルをより豊かにしてくれる、素晴らしいパートナーなのだから。