April「Pour-Over Brewing Kit」 レビュー|ミニマルなデザインのドリッパーセットは、スペシャリティコーヒーの風味を最大限引き出してくれる

今回は、デンマーク・コペンハーゲンのロースター「April Coffee Roaster」と食器などを手がけるベルギーのブランド「Serax」が共同開発したドリッパーセット「April Pour-Over Brewing Kit」についてレビューする。
「April Coffee Roaster」は自家焙煎のコーヒーに加え様々なコーヒーグッズを展開しており、世界中にファンを持つ今注目のロースターだ。


「April Pour-Over Brewing Kit」を購入したのは「SCAJ2022」に参加したことがキッカケ。「SCAJ2022」で「April Coffee Roaster」の創設者である「パトリック・ロルフ」氏がデモンストレーションしており、使い勝手やモノとしての質の高さやデザインに惹かれ購入。


数あるドリッパーの中でも突出した「安定感のある抽出」「洗練されたデザイン」が魅力。使って楽しい、見て楽しいドリッパーだった。

April Coffee Roaster「The April Brewing Kit」について

スペック
付属品 ドリッパー
カップ
ソーサー
形状 平底ドリッパー
素材 セラミック
容量 ドリッパー 約20g
カップ 約300ml(2杯分)
フィルター 専用品 April paper filter
社外品 Kalita Wave 155 / Kalita Wave 185
価格 12,100円
購入 Kigu Coffee URL
Amazon URL

本ドリッパー専用のフィルター(April paper filter)もあるが、高価(45枚で1,200円)。安価な「Kalita Wave 155」も利用できるので、ランニングコストの面でも安心だ(50枚で250円程度)。

「The April Brewing Kit」の良い点◎

  • 競技大会で最高カップスコア&銀賞の実績あり
  • 過抽出を防ぐ独自構造の平底ドリッパー
  • 淹れ方が完成されており味のブレが少ない

競技大会で最高カップスコア&銀賞の実績あり

「April Pour-Over Brewing Kit」は、「World Brewers Cup 2019」でロルフ氏が使用したドリッパーを商品化したもの。ロルフ氏の実力があってこそなのはもちろんだが、本大会では最高カップスコアと銀賞を受賞しており、その性能の高さは折り紙つきだ。

プロが愛用していると聞くと敷居が高いと感じるかもしれないが、かなり扱いやすいドリッパーなので安心して欲しい。

過抽出を防ぐ独自構造の平底ドリッパー

「April Pour-Over Brewing Kit」は「平底ドリッパー」と呼ばれる形状で、底面が平坦でお湯が均等に染み渡りやすく、味のムラが少ない。
他にも「カリタ/ウェーブドリッパー 155」が代表的な平底ドリッパーの製品として挙げられるが、「April Pour-Over Brewing Kit」には「フィルターホルダー」「エアポケット」という2つの独自機能がある。

「フィルターホルダー」
ドリッパーの底には、特有の円錐形の突起が3つあり、紙のフィルターを所定の位置に保持する事ができます。これにより、他のフラットベッドのドリッパーでは得られない流量が可能になります。

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「フィルターホルダー」のおかげかかなり抽出速度は早く、2杯分(300ml)の抽出にかかる時間は約3分30秒。普段使いの観点からすると、在宅時のちょっとした空き時間などに淹れやすいのが便利だ。


豆の粒度は一般的なドリップ用より少し粗めが良い感じ。V60と同じ粒度だと抽出に時間がかかりすぎて、公式レシピの時間に間に合わない。

抽出速度が速いおかげか、過抽出になりにくく雑味が少ない。

お湯を沸かす→豆を挽く→淹れる→片付けまでに10分も掛からないため、在宅ワーク中などのちょっとした時間に淹れやすいのも重宝する。

「エアポケット」

外側のベースにある「エアポケット」は、空気の循環を助け、各抽出を一貫したものする事により、クリーンで雑味の少ないコーヒーを作り出します。

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エアポケットによる効果かはわからないが、かなりスッキリとした味になりやすい印象。

味が薄いということもなく、豆の個性を引き立ててくれる。コーヒーのネガティブな風味が抽出されにくいので、コーヒー豆の持つ甘味や個性が強く感じられる。浅煎りに特にオススメだ。

淹れ方が完成されており味のブレが少ない

「April Pour-Over Brewing Kit」にはApril推奨レシピの記事や、ロルフ氏による解説動画まで用意されている。

豆の粒度について

レシピには豆の粒度の目安が記載されているが、特定のグラインダーを使用した例しか記載されていないため、正確な粒度がわからない点に注意が必要。

ちなみに、僕が使用しているグラインダー「wilfa Svart Aroma」の場合、メモリを「フィルター」と「フレンチプレス」の中間に設定すると、お湯も溢れず風味も丁度良い。

推奨レシピをなぞることで、味のブレが抑えられ、初心者でも美味しく淹れられる。お気に入りのカフェで豆を買ったはいいものの、実際に淹れると「お店で飲んだときと違ってあんまり。。。」というあの残念な感じともオサラバだ。

実際、これまで使用してきたV60に比べて味のブレは減っている。淹れる楽しさもこれまで通りで、美味しいコーヒーを簡単に淹れられる多幸感に満たされる。

「カリタ102」や「ハリオV60」などの定番ドリッパーももちろん良いものだが、

  • 過抽出になりにくく雑味が少ない
  • 抽出が早くスピーディ

このメリットが大きすぎて、普段使いのドリッパーを「V60」から「The April Brewing Kit」に乗り換えた。
レシピが身に付いたら自分なりに工夫してみるのも面白い。実際、豆の粒度によって味付けが大きく変わるので、僕はその日の気分で色々変えて楽しんでいる。

「The April Brewing Kit」の残念な点✖︎

  • ドリッパーとしてはかなり高価

ドリッパーとしてはかなり高価

「The April Brewing Kit」は完成されたドリッパーの一つだが、唯一の弱点はその価格。ドリッパーといえば安くて数百円、大手メーカーのガラス製や銅製の高級ドリッパーでも4,000円くらいが相場だが、「The April Brewing Kit」は「12,100円」という強気な価格設定。

蓋やカップがセットなので単純に比較はできないが、かなり高価な部類と言える。セラミックという比較的安い素材であるにも関わらずだ。品質にもデザインにも満足できる製品だが、価格から考えてマニアックさは否めない。

また、ソーサーとフタは薄い作りなので丁寧に扱う必要がある。セット販売のみで単体購入できないので、割れたら最後というのも怖い。

ちなみに、同じApril製のドリッパー「April Plastic Brewer Ver.2」はプラスチック製で5,000円近い値段なので、相対的にみると高くない気もする。

まとめ

「The April Brewing Kit」は使い勝手も良く性能も良いドリッパーで、アイテムの統一感を重視する方や、コーヒーをより美味しく手軽に飲みたい方にオススメのドリッパーだ。必要なアイテムも一通り揃っているため、初心者にも最適だ。

コーヒーの旨味の上澄みをうまく掬ってくれるドリッパーで豆の個性も出しやすく、スペシャリティコーヒーとの相性も抜群に良い。幅広い種類の豆を飲むのなら「V60」もオススメだが、浅煎りメインならこちらを選んでも良いだろう。

価格こそ高いものの、高い品質と豆の風味を引き出す独自形状は唯一無二。メインのドリッパーに加えて、「味変」としての導入も面白い個性的なドリッパーだ。

メリット

  • 競技大会で最高カップスコア&銀賞の実績あり
  • 過抽出を防ぐ独自構造の平底ドリッパー
  • 淹れ方が完成されており味のブレが少ない

デメリット

  • ドリッパーとしてはかなり高価