「キーボード」は、iPad Proをアウトプット端末として使用する場合、快適に文字入力を行うための必須アイテム。
今回、「iPad Pro 11インチ」をブログの更新や事務作業用として利用するため、今年4月にAppleから発売されたiPad Pro 11インチ用「Magic Keyboard」を購入した。
筆者は他にも「Magic Keyboard 2」「Smart Keyboard Folio」というApple純正のキーボードを複数所有している。
今回は、iPad Pro用「Magic Keyboard」を中心に、それぞれの製品と比較を行いつつレビューしていく。
- iPad Proでブログや会社の資料作成等、本格的なタスクをこなしたい
- 作業場所を問わず、統一された環境で作業したい
- 自分の用途にあったキーボードがどれか分からない
今回比較するのは下記の3製品。
- Magic Keyboard 2(+Magic Trackpad 2)
- Smart Keyboard Folio
- iPad Pro 11インチ用 Magic Keyboard
一通り使用したが、どれも完成度が高く使いやすいキーボード。しかし、サイズや重量、製品コンセプトが異なるため、使用感の全く違う製品となっている。
利用環境や用途によって向き不向きがあり、自身の用途に合わないデバイスを選ぶと、思うように作業効率が上がらなかったり、使うのが億劫になってしまう。そのため、自身の用途を想定し、慎重に選択する必要がある。
コレが「iPad Proに最適なキーボード選び」の難しい部分であり、今回の記事を書くに至った理由だ。
今回の記事では「iPad Pro 11インチ」での利用を前提に書いている。
「iPad Pro」は特殊な端末であり、互換性やハードウェアの制約が存在するため、 PCやMacで快適に使用できるキーボードがそのまま快適に利用できるとは限らない。
「iPad Pro」で快適に使えるキーボードは増えつつあるが、まだまだ製品は限られている。
今回の記事では、Apple純正のキーボードである3つの製品を比較。自分の用途に最適なキーボードを選ぶための指針となるよう、各製品の違いについて掘り下げていく。
はじめに、比較する3製品のサイズ・重量の差異について。
製品名 | 重量 | サイズ |
---|---|---|
Magic Keyboard(iPadPro 11インチ用) | 596g | W248×D192×H15mm |
Magic Keyboard(iPadPro 12.9インチ用) | 698g | W280×D228×H15mm |
Smart Keyboard Folio | 306g | W248×D182×H13.5mm |
Magic Keyboard 2 | 230g | W279×D115×H4~11mm |
Magic Trackpad 2 | 230g | W160×D115×H5~11mm |
上の表をみると、「12.9インチiPad Pro用 Magic Keyboard」と「Magic Keyboard 2」を比較した場合、500g近い重量差がある。
搭載された機能に差があるため一概に比較はできないが、人によっては重量の時点で選択対象から外れる場合もあるので、注意が必要。
「Magic Keyboard」の重量について、発売当時は批判的なレビューが多く、「重たいのは嫌だなぁ」と購入に二の足を踏んでいるユーザーは多いだろう。
しかし、ボク個人の意見として、「重量はそこまで気にならない」と感じている。
理由は、「iPad OS」との高い親和性による、「操作性・機能性の大幅な向上」。「Magic Keyboard」と「iPad OS」を組み合わせることで、PCさながらの快適な使用感と、iPad特有の携行性の高さを実感することができる。
今となっては、増加した重量が些細に感じられるほど便利に感じており、ない生活は考えられないほど。
つまり、本当に自分に必要な物なら、たかが数百グラム程度の重量増など気にならない、ということ。気に入っているおしゃれな服の重さを気にする人などいないのと同じだ。
「Magic Keyboard」の重量が心配でも、この記事を読んで自分に合っていると感じれば、購入しても全く問題ないので安心して欲しい。
カタログスペックでも製品ごとの違いは感じられると思うが、これらはあくまで製品のもつ個性。重要なのはそれぞれの使用感の違いが、自身の用途に合っているかという点にある。
ここからは、全製品を所有するボクの目線から、各製品の特徴や使用感について比較していく。
比較するにあたり、4つの視点から比較を行う。項目は下記のとおり。
- 打鍵感:タイピングの快適さ
- 可搬性:持ち運びやすさ、出先での使用感
- 機能性:搭載された機能について
- 質感:製品のデザインや素材について
ここで押さえておいて欲しいのは、ボクの主な用途は「文章作成」と「画像編集」である点。
文章作成は「Apple Pencil」による下書き→キーボードによる清書・校閲の順に行う。
画像編集は外部カメラで撮影したRAWデータをUSBから読込、「Apple Pencil」を用いて「Adobe Lightroom」上で編集を行う、といった手順。
その他の用途(イラストやゲーム、プログラミングなど)については、推測かさわり程度の知識しかないので、詳細なレビューは出来ない。この点はご容赦いただければ幸いだ。
打鍵感は非常に感覚的な要素であり、言語化するのが難しいが、キーボードの使用感を大きく左右する重要な要素。
使用されるキースイッチの種類によって性質が大きく異なるので、自分の好みにあったものを選ばないと、いくら高級なキーボードも宝の持ち腐れとなる。
「Magic Keyboard」の打鍵感は、いい意味で普通だ。最高の打鍵感ではないが、不満を漏らすレベルでもない。多くの人にとって、十分に満足できるキーボードだろう。
レイアウトは、本体サイズの都合上、一部のキーが小さくなっている。とは言え、数日あれば慣れる程度の些細な問題で、個人的にはそこまで気にならなかった。
キースイッチには沈み込みが1mmと浅めのシザー構造スイッチを採用。最新世代のMacbookシリーズや「Magic Keyboard 2」に搭載されているものとほぼ同様のものと考えれば良い。
実際の使用感としては、キー押下時の沈み込みも、フィードバックは上々。モバイル機器用としては十分なレベルだ。
キースイッチも大きめ。一般的なノートPCと同じサイズなので、愛用している「HHKB」とも違和感なく使い分けることができている。人によっては軽すぎるかもしれないが、一般的な用途で不満を感じるレベルではない。
また、iPad本体との接続は本体裏の端子で行われるため、有線接続となっており、入力遅延もなくレスポンスが良い。
普段使いはもちろん、長文の入力といったハードな作業も快適にこなすことができるだろう。
「Magic Keyboard 2」は本体が軽量である影響か、タイピングのスイッチ感(底打ち時のカチカチした感触)が少なく感じられる。
ボクは、「Magic Keyboard」程度の重みが好みとはいえ、十分優れた打鍵感に感じている。
また、「Magic Keyboard 2」はキー配列が一般的で、Macbookユーザー/PCユーザーも違和感なく利用できるメリットがある。
あとは「Smart Keyboard Folio」だが、正直、タイピング感にこだわりのあるユーザーは避けたほうが無難だろう。
フニャッとした打鍵感には慣れが必要。この製品の最大のメリットは、非常に軽量である点と本体に装着できる点であり、その分打鍵感は犠牲となっている印象を受ける。
上記の2製品と比べ打鍵感こそ劣るが、ソフトウェアキーボードとは比較にならないほど快適。お手軽に物理キーボードの恩恵を得ることができるので、SNSやメモ等の軽作業にオススメだ。
持ち運びやすさを重視する場合、「Magic Keyboard」か「Smart Keyboard Folio」を選ぶのがオススメ。
キーボード兼カバーとして使用できるため、余計な荷物も増えない、使いたいときにすぐ使えるというメリットがある。
ブログを書く上で、「キーボードがすぐ使える」というのは非常に重要なポイント。
外で書くつもりが無くても、出先で突然インスピレーションが湧くことは多い。そんなときに本体と外付けキーボードをわざわざ取り出すのは面倒だし、モチベーションを下げる要因となる。
iPadの気軽さとキーボードを組み合わせることにより、「素晴らしいマシンスペック」と「最高のタイピング環境」を併せ持つ、自宅/出先両用の生産性爆上げツールを生み出すことができる。
とはいえ、自分のデスク、または自宅内のみでしか使用しないユーザーにとっては、多少オーバースペック気味な製品と言えるかもしれない。
その場合、「Magic Keyboard 2」を選択するのが良いだろう。最も安く、打鍵感にも優れたコスパ最高のキーボードだ。「Magic Trackpad 2」と合わせることで、Macさながらの入力環境の構築も可能。
Bluetooth接続である点と別途充電が必要な点(しかもLightning端子。TypeCが搭載されれば幾分マシになるのだが・・・)は要注意だが、デスクでの据え置き利用が中心の場合、最高の入力環境を構築することができる。
ちなみに今回紹介する製品の中で最も大型だが、重量自体は「230g」と軽いので、外に持ち出して使用することも全然可能(背面が傷つきやすいのは気になるが)。
「Magic Keyboard」を付けたままApple Pencilを使用すると、バランスが崩れて後ろに転倒してしまう。
そのため、「Apple Pencil」使用時はケースを外す必要がある。取り外しはマグネット式のため容易だが、本体とケースの2つに分離するため、デスク上のスペースを占有する点は注意。
その点、「Smart Keyboard Folio」はフリップカバーのように折りたためるので取り外しも不要でスムーズだ。
搭載されている機能の数でいうと、「Magic Keyboard」が圧倒的。
欲しい機能が全て詰め込まれており、機能面で不足を感じることは少ないだろう。
- キーボードバックライト
- 最大で130度のチルト角度
- Multi-Touch対応トラックパッド
- USBTypeCポート(充電用)の追加
シザー方式のキースイッチにはバックライトが搭載。暗所でも快適に入力できる。
ディスプレイ(iPad Pro本体)の角度は最大で130度で調整可能となり、「Smart Keyboard Folio」の2段階調整から使い勝手が大きく向上。重心のバランスも改善し、膝上での利用時にも安定するようになるなど、利用できるシーンの幅が広がった。
マルチタッチ対応のトラックパッドも搭載され、Macと同等レベルの快適なジェスチャー操作が可能となった。手をホームポジションから動かすことなくタイピングできるようになったのも嬉しい。
ケース側面にはType-Cポートが追加。充電専用だが、ディスプレイへの映像出力と充電を同時に行うなど、今までハブが必要だったことが本体だけで可能になるなど、iPadにとって非常に大きな進歩だ。
iPad Proに欲しい機能を全て「全部入り」キーボードなので、「必要な機能の取捨選択が難しいユーザー」や「iPad ProをPCライクに扱いたいユーザー」にオススメ。
多少高価だが、初めからコレを選んでおくと最終的な出費は安く済むかもしれない。
「Smart Keyboard Folio」は「キーボードのみ」のストイックな製品。必要最低限の機能しか搭載されていないが、軽量なので取り回しは良い。
また、「Magic Keyboard」同様有線接続であるため、充電不要で利用できる。
「Magic Keyboard 2」は、別途充電が必要だったり、接続方法がBluetoothだったり、充電端子がLightning端子であるなど、iPad Proに最適化されていない感が否めない。
PCやMacでも共通のキーボードが使用したいユーザーなど、「iPad以外での利用も想定しているユーザー」にオススメだ。
製品としての品質はAppleらしくどれも素晴らしいが、「Magic Keyboard」に関しては「もう少しなんとかなかったかな?」というのが正直な感想だ。
「iPad Pro」が浮いているように見えるデザインなど、洗練された設計は称賛に値するが、本体素材がラバー製であるのが残念でならない。
ボクが所有している第一世代の「Smart Keyboard Folio」と比べると、素材感はいくらか改善されており、質感も向上している(色味も若干黒っぽく変化)が、指紋やキズのつきやすさは相変わらずで、使うのに多少気を使ってしまう。
外装に比べ、内装の高級感はそこそこ。キーやトラックパッドはブラックのアルミ製で艶消し加工が施されており、さらさらした感触で高級感がある。
正直いうと、このサイズ感で質感を重視するなら、「12インチ Macbook」の購入がオススメだ(用途さえ合うなら)。
カラバリの少なさも相変わらず。ダークグレーの1色のみとなっており、純正カバーのカラバリの豊富さと比べると物足りなく感じる。せめてホワイトカラーでもあれば華やかに感じられると思うのだが・・・。
それに比べ、「Magic Keyboard 2」は発売されてからかなりのロングセラー商品にも関わらず、古臭さを感じない洗練されたデザインは流石といったところ。アルミをふんだんに使用しており、Appleらしさ溢れる美しい製品だ。
2色展開(ダークグレーはテンキー付モデルのみ)となっており、本体カラーに合わせた色を選択できる。
背面がプラスチックで傷つきやすいのがネックだが、目に付かない場所なのでそこまで神経質になる必要もないだろう。
今回はiPad Pro 11インチ用「Magic Keyboard」についてレビューした。
様々な角度から比較を行った結果、「Magic Keyboard」ならではの優位性が多く見つかった一方、他の製品の方が適しているシーンも多かった。
結論として、「Magic Keyboard」を選ぶべきなのは、次の5点に当てはまるユーザーといえる。
- 打鍵感が何より大事
- 場所を問わず、統一された環境で作業したい
- iPad Proのスペックを最大限活かしたい
- どうしても欲しい機能がある
- 30,000円越えの価格を気にしない
- 持ち運びはなるべく快適なほうがいい
「Magic Keyboard」は、iPad Proに最適化された機能により、iPad Proの新たな可能性を提示してくれる新たなパーツ。「タブレットとしての利便性」と「ラップトップPC並みの作業効率」を兼ね備えたハイブリットマシンを入手する、唯一の方法だ。
用途によっては「Magic Keyboard 2」や「Smart Keyboard Folio」も選択肢に入るので、自身の用途や環境に照らし合わせて、最適なデバイスを見つけてみてほしい。